阿修羅編(その1)

リングにかけろ1

大変遅ればせながら明けましておめでとうございます。このブログもおかげさまで開設以来2度目のお正月を迎えることができました。今後もマイペースで続けていこうと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

ということで、本年最初のお題は阿修羅編。車田御大自身が「最大のスランプ」と評しており、また正直、ファンの評判もあまり芳しくないこの阿修羅編ですが、個人的にはかなり好きなパートだったりするわけで、まずはなぜ評価がイマイチなのかを分析することから始めたいと思います。

最初に考えられるのは、コスチュームが影道に酷似しているのに加え、「阿修羅9つの門」という設定も「影道五重塔」を思い起こさせるものがあり、真新しいものが感じられなかったことではないでしょうか。

次に、キャラの名前や必殺技が、漢字なので覚えにくいということ。日本人なのに・・・とは思いますが、カタカナだとスッと頭に入るのに対し、漢字だとなかなか覚えられないのですよね。

例えば「ポセイドンのフィニッシュブローは?」と聞かれれば、「サイクロンメイルストローム」と即答できるのですが、「羅刹鬼(らせつき)の必殺技は?」で「阿修羅魄撃衝(はくげきしょう)」はなかなか出てこないわけです(そもそも羅刹鬼も魄撃衝もルビが無いと読めないよなあw)。

これは私だけなのかもしれませんが、ともかく、少年誌において「名前が覚えにくい」というのは、結構人気に影響があるような気がします。

そして3番目は阿修羅の目的や存在がよく分からないこと。阿修羅編の冒頭では「日本ジュニアに取って代わるのは阿修羅一族」との描写があって、また京都の志那虎邸に百鬼丸を差し向けていることなどから、最初は普通に阿修羅一族対日本ジュニアという構図だったと思うのです。

それがいつの間にか「日本ジュニアなどどうでもいい」になり、結局は「阿修羅の目的はカイザー」になるなど、何か取って付けた感が否めませんでした。読者にしてみれば、ほんの少し前に決着が付いたはずのカイザーがすぐにまた出てきて、「今度もカイザーかいっ!?」と、いささか食傷気味だったのではないでしょうか。

とまあ、いくつか理由はあると思うのですが、個人的に阿修羅編の最大の不幸は「十二神戦の後」だったことだと考えています。

何のために行われたのか、どうなったら勝ちなのかさえ分からない十二神戦。菊ちゃんの言葉を借りれば「大義名分の無いただの殺し合い」なのにもかかわらず、そんな中学生とワケの分からない外国人集団の対戦に70万人もの観客が詰めかけるというとんでもないシチュエーションでした。

さらに富士山よりも巨大な人間は現れるわ(正体は結局最後まで不明w)、結局闘いの真の目的はメリケンサックの奪い合いだったことが判明するわで、普通に考えればもうムチャクチャなお話のわけですが、これがなんと空前の大ヒット。ちなみに車田先生はその勢いでこの年愛読者賞も受賞しています、

私自身も、当時はこれを熱狂して読んでいたので人のことは言えませんが、後になって冷静に考えると、あの盛り上がり方は明らかに異様であり、描き手も読み手も酔っ払っていたとしか思えないのですねw もうアドレナリン出まくりで、「ウオォ、なんだかよく分からないけどすごいぞっ!」みたいな感じだったのかなと。

で、その十二神戦という祭りの後に始まったのが阿修羅編。生まれた時代が悪かったと申しますか、酔いが覚めてしまった後では普通のことをやっても響かず、「何かパワーが落ちたよね」というイメージになってしまったのではないでしょうか。

さて、ここまで不人気だったと思われる理由を挙げてきましたが、これらを除けば、冒頭にも書いたように阿修羅編は結構見所が多いパートだと思うわけで、特にプロ編における人間ドラマはこの阿修羅編があってこそ深みを増しているのだと感じます。そのあたりは次回また書くことにしたいと思います。

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