デッドエンドファイヤー

リングにかけろ1

世界大会編や十二神戦が連載されていた当時、ジャンプを買うのは町の本屋さんか駅の売店、もしくは最近ではあまり見なくなりましたが、パンやジュース、雑誌などを売っている雑貨屋さんがメインでした。

ちょうどコンビニの黎明期にあたり、24時間営業ではない、文字通り7時から11時(23時)までのセブンイレブンがポツポツと出来はじめていた時代です。

で、関東地方ではジャンプは基本毎週月曜日発売なのですが、小さな本屋さんや雑貨屋さんの中には、フライングして前週の土曜日に店頭に並べているところがあったのですね。私もそれを求めて、自宅から自転車で小一時間の所にある雑貨屋さんに通ったものです。

理由は、少しでも早く連載の続きを読みたいのと、あとは友人に対するちょっとした優越感でしょうか。当時クラスではみんな月曜日の朝、通学途中にジャンプを買って、教室で読んでいるという感じだったのですが、「そんなの、俺はもうとっくに知っているんだぜ~」という、今になって考えればどうでもいいような「勝った感」だったのだと思います。

そしてある月曜日、バルカンの必殺パンチについて友人たちが語り合っているのを見て、私は物知り顔で「ああ、デットエンドファイヤーだね」と話に加わりました。すると友人たちは「はぁ?お前、何言ってんの?」とばかりにこちらを見てきます。「えっ?バルカンのパンチでしょ?」と言う私に、彼らがページを開いて差し出したものは・・・

「ええええぇぇぇ??俺のには確かにデッドエンドファイヤーって・・・」
「お前、夢でも見たんじゃないの?」
自分の記憶に確信はありましたが、動かぬ証拠を出されては反論するすべはありません。もう、何が起こったのか分からず、その日の授業は全く頭に入りませんでした。学校が終わると一目散に家に帰り、問題のジャンプ最新号を探しました・・・が、なんと、その日に限り母親が廃品回収に出してしまっていたのでした・・・。

その後発売になった単行本でも、当然というか、問題のパンチ名はやはりショッキングファイヤーになっていたわけですが、普通に考えれば間違えようが無いし、そもそもデッドエンドファイヤーなどという気の利いたパンチ名を脳内で生成したのだとすれば「すごいぞ、俺!創作の才能があるんじゃないか?」などと訳の分からないことを考えたりもしたものです。

しかし一方で、「お前の勘違いなんだよ。ほら、ちゃんとショッキングファイヤーって書いてあるだろ?」と言われると、だんだん自分の記憶に自信が持てなくなっていったのも事実です。よく事件の容疑者が、最初は絶対に自分はやっていないと思っていても、取調室で刑事から「お前がやったんだろ?」としつこく言われているうちに次第に「自分がやったのかも・・・」と思ってしまうようになると聞いたことがありますが、なんとなく分かる気がしました。

さて、それから数十年が過ぎ、インターネットの時代が来て、私の疑問は氷解しました。これはマニアの間では有名な話らしいのですが、担当編集さんがパンチ名をデッドエンドファイヤーにして印刷に回したものの、後から車田先生が「ショッキングファイヤーの方がいい」と差し替えさせたみたいなのですね。

要は、数少ない初期ロッドのみがデッドエンドファイヤーで、後はショッキングファイヤーになっているとのことなのです。私はこれを知った時、心底「インターネットって素晴らしいなぁ」と思いましたよ。長い間、自分の記憶違いだったのかもと悩んでいたことが、ようやく解決したのですから。ちなみにどちらのパンチ名が格好いいかについては、私は担当さんに一票です。

もし当時のデッドエンドファイヤー版のジャンプをお持ちの方がいらっしゃいましたら、画像をアップしていただけるととてもうれしいです(いないだろうなぁ)。

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