志那虎の右腕

リングにかけろ1

不慮の事故(?)によって右腕が効かなくなってしまった志那虎。その経緯についてはキチ○イ扇風機の項で詳しく書いているので省略しますが、それを機に弱虫だった自分と決別し、左腕を徹底的に鍛え、スペシャルローリングサンダーなどの必殺ブローを身に付けていく姿は、多くの読者の共感を得たことと思います。

ちなみに作中の解説によれば、志那虎の右腕は全く動かないわけではなく、「物を殴るほどの力は無い」とのことで、実際、右腕を使っているシーンはいくつか見受けられました。

さて、この志那虎、父親への当てつけ(?)で始めたボクシングで、瞬く間に関西チャンピオンとなり、チャンピオンカーニバルに出場するくらいですから、ボクサーとしての資質は計り知れないものがあります。

あのスコルピオンやヘルガをして「右腕の故障さえ無ければ竜児や剣崎をも凌ぐボクサーになっていた」と言わしめるほどで、その意味ではこの「もし志那虎の右腕が動いたら・・・」というのは、皆の願望であり夢でもありました。そしてそれが如実に表れたのが世界大会決勝・対ユリシーズ戦だったと思うのです。

ギリシアの先鋒ユリシーズは、ハナから志那虎の右腕が動かないことに着目して、左腕だけに注意を払い、神技的ディフェンスもSRTもあっさりと撃破し、志那虎を窮地に追い込んでいきました。

そしてここで例の「もし右腕が動いたら・・・」なんですね。「右腕よ!たった一度だけ!!」

さらにその後の「さらば志那虎・・・猛虎よねむれ・・!!」個人的には、これがリングにかけろにおける最も泣けたシーンの一つでして、「物を投げたり刀を振り下ろしたり出来るんだから、フェイントくらいは打てるだろ」などという野暮な突っ込みが消し飛んでしまうくらい感動したのでした。

話しは少し遡りますが、このギリシアとの決勝戦、志那虎は「先鋒」だったのですが、後から考えると、これってすごくよくできたシチュエーションだと思うのですよね。ギリシア戦が始まった時点では、読者は誰も「日本ジュニアのメンバーが死んでしまう」とは夢にも思っていないわけで、だからこそ「右腕が動く奇跡と引き換えに命を落とす」という設定が、とてつもない驚き&感動的だったのではないでしょうか。

仮に河井や石松が先鋒だったとしたら、戦前から「きっと志那虎も死んでしまうのだろうなぁ」と何となく予想が出来てしまうので、「右腕と引き換えに・・・」 の感動が少し薄れてしまったのではないかと。その意味では車田御大のストーリーの組み立て方はさすがだと思います。

あと、余談になりますが、リングにかけろ2で登場した、志那虎の息子・伊織の「雷光明王流転拳」は、言ってみれば左右両腕によるSRTで、まさに「志那虎の右腕が動いたら・・・」という願望、夢を具現化したブローのわけですが、正直、今ひとつパッとしなかったので、「もう少しうまい見せ方は無かったのかなぁ」と、ちょっと残念だったりします。

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