石松とドン

リングにかけろ1

リングにかけろのコミックス版の巻末には、車田正美先生の知り合いの漫画家さんたちの寄稿が掲載されていました。

鳥山明、秋本治、本宮ひろ志、小林よしのり、ゆでたまご、江口寿史などなど(敬称略)今考えるとものすごいメンバーなわけですが、彼らが口を揃えて言うのは「石松こそが車田先生そのものである」ということ。ケンカっ早いがシャイな性格、そして足が短いのを気にしているところなど、まんまであると(ちなみに酒は弱いらしいw)。

で、その石松が最も活躍したのが世界大会のイタリア戦です。対戦相手を試合前に闇討ちして次々と出場不能に追い込み、また日本ジュニアにも同様のことを仕掛けてきたイタリアチームにブチ切れ寸前の石松は、敵の一番手を倒した後、審判に「勝ち抜き戦」を進言します。

まあ、これで本当に勝ち抜き戦になってしまうところがスゴいのですが、ともあれ、ザコ4人に圧勝した石松は、さすがに疲れが見えてドン・ジュリアーノとの対戦は竜児に譲ったものの、圧倒的な存在感を示してくれました。

この時、石松とドンの間に会話らしきものは無かったのですが、そこは男と男、何か通じるものがあったのでしょう。リングにかけろ2では、ドンは石松と「義兄弟になりたかった」と言い、最大級の賛辞を贈っています。

さらにドンの息子・シーザーから「格が違いすぎる」と言わしめたシーン。もう、めちゃくちゃ格好良かったです。「ここからは大人のケンカだ!ガキは引っ込んでな!」というセリフは、当時同様に中年の域に差し掛かっていた私に勇気を与えてくれたものです。さらにさらに浜辺でのドンとのロシアン・ルーレット。これもなかなか見応えがありました。

実は私は、日本ジュニアの中で一番と言っていいくらい、この石松が大好きなのですが、その理由としては、一見無鉄砲なキャラのようでいて、その実、謙虚に自分の立場を理解しているということが挙げられます。

そしてそれはボクシングだけでなく、恋愛においても、菊ちゃんが自分より剣崎のことが好きだと分かっていながら、闘うことにしかやり場を見つけられない男のつらさがしみじみと感じられて、もうこのシーンは涙無しには見られませんでした。

「自分の弱さを知っている人間が一番強い」という言葉は、まさにこの石松のためにあるような気がします。

最後に、ドン・ジュリアーノの話が出てきたので追記しておくと、アニメ版の日米決戦編でブラック・シャフトがホワイティやミックと簡単にコンタクトが取れたのは、ドンが裏で糸を引いていたという設定でした。ちなみにこの時ドンが抱いているのがシーザーです。

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