消えたロクさん(改訂版考察その1)

リングにかけろ1

Twitterでジャンプコミックス版(以下コミックス版)とリングにかけろ1(以下改訂版)の違いについてツイートすると、リアルタイムで読んでいた世代の方から「知らなかった」「改訂版は読んだことがない」というリプを数多くいただきます。

そこで今回は、コミックス版と改訂版の違いについて解説したいと思います。本来は、この改訂版については言いたいことが山ほどあるのですが、とりあえずは冷静にw相違点を洗い出していきます。

まずおさらいですが、リングにかけろの漫画本は、これまでにコミックス版全25巻、ワイド版全15巻、文庫版全15巻、改訂版全18巻の4種類が発売されています.

コミックス版は基本的に週刊少年ジャンプでの連載をそのまま収録したもので、またワイド版、文庫版も若干の修正はあるものの基本的にはコミックス版と内容は同じです。

で、問題の改訂版ですが、2000年に続編である「リングにかけろ2」 の連載が始まったのを機に、翌年、それと区別するために「リングにかけろ1」として、内容を大きく修正して刊行されました。ちなみにこの改訂版を含め、現在紙の本は販売されておらず、中古以外で手に入るのは改訂版の電子書籍のみとなります。

さて、改訂版のおもな修正点は1.序盤の下町人情話的要素の大幅カット 2.コンプライアンス的に問題のある箇所の修正 3.キャラの呼称、上下関係などの設定変更 4.その他微調整となります。で、それぞれ修正点がかなり多いため、今回は下町人情話のカットについて書いていきます。

まずコミックス版では、家出をした竜児と菊は山口から東京行きの新幹線に乗り込み、車中で可奈ちゃんとばあやと知り合うのですが、そのあたりの描写や菊の悪ノリぶりは全てカット。彼女たちが誰なのか何の説明も無く、唐突に4人で東京駅に降り立つという、改訂版だけ読んだらワケの分からない展開になっています。

そして、結構有名な「テリブル東京」の部分も全て無くなっています。竜児たちが芸能事務所のスカウトを装った人さらい(?)に声をかけられたり、全財産の入ったバッグを盗まれたりと、「東京って怖い・・・」という回でしたが、これらは省略されて、竜児たちを保護した警察からいきなり三条家に電話が入るなど、こちらもかなり唐突でした。

さらに序盤では登場頻度がかなり高かった「魚屋のロクさん」が、改訂版ではほとんど出てこなくなります。

ボクサーとしての才能には若干疑問符が付くロクさんですが、大村会長の指示に従って闘うと、なんとスパーリングで竜児をノックアウト。これはセコンドの菊の奢りが招いたもので、これによって菊が人間的に成長していくという結構重要なパートなのですが、当然カットです。ちなみにこのカットがなければ、ロクさんは剣崎以外で竜児に勝った唯一の男になっていましたw

他にも、ロクさんが苦労の末プロテストに合格する話、ランボルギーニ男とのセッちゃんの取り合い、過酷な減量苦とデビュー戦、お母さんが田舎から出てきてロクさんを連れ戻そうとする話(母の日にカーネーション)なども全滅でした。

特に減量に苦しんだロクさんがトイレの水まで飲もうとする回は、「華やかに見える世界の裏には想像を絶する苦労がある」ということを当時の少年たちに教える名シーンだったと思うのですが残念です。

う~ん、もうこの改訂版はロクさん(あと吉田さんも)の存在を抹消するために刊行されたと言っても過言ではないほどの徹底したカットぶり。おそらく改訂版で初めてリングにかけろを読んだという人に「ロクさん」「吉田さん」と言っても、誰のことだか分からないでしょう。

「リアルタイムでリングにかけろを感動して読んでいた」という人が編集に携わっていたとしたら、正直、このようなカットは絶対にしないと思うのですが、最初に書いた通り、今回は相違点の洗い出しが目的なので、その辺はまた後で書きたいと思います。

ということで次回は、コンプライアンスの点で修正を加えられたであろう部分(ドイツ軍団など)について紹介する予定です。

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