リングにかけろのジャンプコミックス(JC)の巻末には、著名人などの寄稿が掲載されていました。今回はこれについてまとめてみたいと思います。まず、巻数と寄稿者は以下の通り(敬称略)。お気づきのように、前半はプロボクサー、後半はリングにかけろと同時期にジャンプで連載していた漫画家の先生たちがメインになっています。
巻数 | 寄稿者 | 巻数 | 寄稿者 |
1 | 具志堅用高(プロボクサー) | 14 | 田中つかさ(漫画家) |
2 | 輪島功一(プロボクサー) | 15 | 小谷憲一(漫画家) |
3 | ガッツ石松(プロボクサー) | 16 | 福田勝洋(俳優) |
4 | 柴田国明(プロボクサー) | 17 | 本宮ひろ志(漫画家) |
5 | ロイヤル小林(プロボクサー) | 18 | 小林よしのり(漫画家) |
6 | 大熊正二(プロボクサー) | 19 | 高橋よしひろ(漫画家) |
7 | 中島徳博(漫画家) | 20 | ちばあきお(漫画家) |
8 | 秋本治(漫画家) | 21 | ゆでたまご(漫画家) |
9 | 池沢さとし(漫画家) | 22 | みやたけし(漫画家) |
10 | コンタロウ(漫画家) | 23 | 鳥山明(漫画家) |
11 | 友利正(プロボクサー) | 24 | ちばてつや(漫画家) |
12 | 磯部明(プロボクサー) | 25 | 車田正美(漫画家) |
13 | 江口寿史(漫画家) |
記念すべき第1巻の寄稿者は具志堅用高さん。当時、日本人では唯一の世界チャンピオンで、「カンムリワシ」の異名を持ち、世界タイトル13回防衛の記録は今でも破られていません。
正直、当時のリングにかけろは、まだ連載が始まったばかりで海のものとも山のものともつかぬ存在だったのですが、このスーパースター具志堅さんの推薦文を読んで、当時まだ無垢だった私は「これはきっとスゴい漫画に違いない」とコロッと洗脳されてしまったのでしたw
で、寄稿の内容はといいますと、タイトルがいきなり「ボクシングは苦しいスポーツだ」と、ロードワークや減量の厳しさについて触れています。また具志堅さんのお姉さんが良き理解者だったことも菊ちゃんと竜児に似ているとも。このあたりを見ると、この頃はまだ正統派熱血ボクシングだったんだなぁと思い起こさせてくれますね。そして最後は「がんばれ竜児、早く世界チャンピオンになるんだ!」で締められていますが、基本的にボクサーの方の寄稿はこういうニュアンスの締めが多いですw
そして続く第2巻は輪島功一さん、第3巻はガッツ石松さんと、大御所が続きます。先の具志堅さんを含むお三方は、作中にも実名で登場しており、物語をとてもリアルに感じさせてくれました。都大会終了後には、輪島さんたちが竜児を自分のジムにスカウトしに行こうとするシーンなんかもありましたね。ただ残念なのは、改訂版では実名が出ていないため、端から見ると、「やたら能書きの多い、誰だかよく分からないオッサンたち」になってしまっていることです(涙)
さて、このボクサーによる寄稿は第6巻まで続き、第7巻では「アストロ球団」の中島徳博先生の寄稿が掲載されます。この7巻が発売されたのは、リアルタイムではチャンピオンカーニバル編が連載されていた頃で、いわば超人ボクシングへと舵を切った時期。そこに超人漫画の第一人者(?)とも言える中島先生の寄稿が載っているというのは、今考えるとなかなか意味深ですねw
ちなみにボクサーの寄稿は第12巻の磯部明さんのものが最後になっています。たしかにマグナムやテリオスが飛び交っている時期に、プロボクサーの方に寄稿をお願いしたら、「お前、ボクシングをナメとるんか!?」と怒り出す方もいたかもしれませんものね(汗)
話を戻すと、件の7巻以降は、基本的に漫画家の先生たちの寄稿が続くわけですが、その顔ぶれを見ると、秋本治先生、池沢さとし先生、江口寿史先生、本宮ひろ志先生、小林よしのり先生、ちばあきお先生、ゆでたまご先生、鳥山明先生など、まさに蒼々たるもの。そしてそのほとんどが現在でも第一線で活躍しているあたりに、当時のジャンプのすごさを感じることができます。
その中でも印象に残っているのが、「ゴーマニズム宣言」で独自の地位を築き上げた小林よしのり先生の「とうちゃん、かあちゃん、ねえちゃんの人情話でやってた頃はやつもトロかったぜよ」の書き出しで始まる寄稿。「お互いにトロい描き方だけァしねェでおこうぜよという」くだりに、小林先生の生き様が垣間見えます。また「世界の鳥山明先生」が、近所の子どもたちにサインを書いてやっても無反応だったのに、車田御大と一緒に撮った写真を見せたら大騒ぎだったという、今では考えられないようなエピソードなど、この巻末寄稿だけを読んでいても十分に楽しむことができますね。
そして最終25巻の巻末は、車田御大自らの後書きです。これはもう説明不要かと思いますので、とりあえずお読みになってみてくださいませ。
ちなみに、この巻末寄稿は、電子書籍では一切カットされています。これはリングにかけろや集英社の書籍だけでなく、ほぼコミックス全般の傾向だと思いますが、巻末寄稿を電子版に付け加えるなど、ほとんど経費をかけること無しに可能なことだと思いますので、このあたりは切に改善を希望するところです。